採用コスト削減を目的に、求人サイト依存だった採用構造からの脱却を図り、自社採用サイトを求職者視点で再設計。情報設計からUI・フロントエンド実装まで一貫して担当し、エンゲージメントの大幅改善と自社サイト経由での採用実績創出を達成した。
課題
当時の採用サイトには、コンテンツと技術の両面で課題があった。
コンテンツ面では、コーポレートサイトと似たようなインタビュー記事が重複しており、求職者としてどちらを見ればよいか分かりづらい状態だった。また、採用サイト・コーポレートサイトのいずれを見ても事業内容が具体的に伝わらず、求人サイトの掲載情報や社員インタビューの方が仕事内容をイメージしやすいという状態だった。
技術面では、長年にわたるデザイナーの編集によりWordPressのコードがスパゲッティ化しており、運用・保守面でも課題を抱えていた。
加えて、採用活動は求人サイト中心の集客構造で、自社サイト経由での応募実績はほぼない状態だった。
アプローチ
自身が入社時に感じていた「事業内容が分かりづらい」という実体験も踏まえ、求職者が本当に知りたい情報を軸にコンテンツと導線を再設計した。役員中心だったインタビューを現場社員へシフトし、抽象的だった事業紹介文も業種や業務内容が紹介文だけで把握できるよう具体化。TOPページからほぼ全てのコンテンツページへアクセスできる導線を整備し、社内風景の写真を活用して働くイメージを持ちやすい構成とした。技術的負債の解消も並行して実施し、複数のヘッダー・フッターの統合やCSS簡略化によるリファクタリングを行った。
1. FVと導線の再設計
分析ツールでユーザーの行動を確認したところ、FVを見ただけで直帰するケースが目立っていた。既存のFVは社員の顔写真を大きく打ち出す構成だったが、他社の採用サイトを調査すると、会議室や執務室など働く場の写真を使い、求職者が働くイメージを持ちやすくする設計が主流になっていた。人事部長からも「以前はエース社員の打ち出しで応募を引っ張れていたが、最近はその効果が薄れている」という所感を得ていたこともあり、FVを職場環境の写真に変更することを提案した。
あわせてTOPページの導線も見直し、各単元の扉ページへのリンクのみだった構成から、直接下層ページへ遷移できるリンクを設置。求職者が目的の情報に迷わずたどり着ける構成へ改善した。
2. 社員インタビューの刷新
役員・上位役職者中心だったインタビュー構成を、現場に近い社員へ大幅にシフトした。変更前は執行役員1名・事業部長2名・副部長1名・シニアマネージャー2名の計6名体制だったが、変更後は執行役員1名・事業部長1名・部長クラス2名・マネージャー3名・リーダー5名・サブリーダー1名・メンバー5名の計18名体制へ拡充した。
人選は広報・人事が担当し、各部門からまんべんなくインタビューを追加する方針とした。特に、これまで手薄だった技術職のインタビューを3名追加できたことで、エンジニア志望の求職者にも入社後の環境をイメージしてもらいやすい構成になった。入社後に直属の上司や同僚になり得る人物の声を厚くすることで、エース社員への憧れではなく、実際の職場環境をもとに応募を検討できる設計を目指した。
3. コンテンツの具体化
事業紹介文は専門用語が多く説明もないため、業界を知らない求職者には理解しにくい状態だった。アフィリエイトがどういうシーンで使われるかの説明を加えるなど、業界未経験者にも伝わる文章に改善した。
部門紹介も大幅に拡充した。従来は5セクションの簡素な説明にとどまっていたが、社内の部門が多様化してきたことを踏まえ、全4ページ・13セクションに再構成し、ほぼ全部門を網羅する形で修正・追記を行った。藤巻が草案を作成し、広報が内容を精査・修正する形で協働した。
4. WordPressのリファクタリング
同一コンポーネントで対応できる箇所がファイル単位で分割されており、一か所変更すると各所で崩れが発生する状態だった。共通化できるコンポーネントを一つのファイルに統合し、不要なCSSを削除して軽量化。技術的負債を一定解消した。
リニューアル直後(前年比)
- ユーザーエンゲージメント:前年比41.15%向上
- スクロール率:前年比28.77%向上
- クリック数:前年比30.51%減少(TOPページからの導線拡充により、回遊せずとも目的の情報にたどり着けるようになったため)
- ユーザー数:前年比37.44%減少(大規模攻撃による外部要因)
- 社内報でのインタビュー掲載
1年計測(採用導線としての成果)
- 応募クリックCTR:約20%(AU 9,947に対し応募クリックAU 2,018)
- 応募:16名(従来は求人サイト中心で、自社サイト経由の応募実績はほぼなし)
- 採用:1名
- 求人サイト依存の採用構造から、自社サイト経由の採用チャネルをゼロから構築
継続改善
- CTRに対しCVR(クリック→応募完了)が0.16%と低い点を分析し、応募先(外部ATS)のUIにボトルネックがあると特定
- 自社サイト側で対応可能な施策(カジュアル面談の訴求・募集要項の一部掲載・採用フローの明示など)を人事へ提案・推進中
学び
当初のサイトはどのページも内容が曖昧で、求職者への機会損失につながっていたと考えられる。広報と協力しながらコンテンツを精査し、ページデザインから内容までを再設計していく中で、自身もライティングに参加し、求職者目線でほしい情報を打ち出した。この経験を通じて、デザイナーがUIだけでなくコンテンツの中身にまで踏み込むことの価値を学んだ。採用サイトは求職者との最初の接点であり、言葉の設計がエンゲージメントに直結することを、数値の変化をもって実感した。
リニューアル後も1年間の計測を継続した結果、エンゲージメント向上だけでなく採用導線としても機能することを確認できた。同時に、CTRとCVRの乖離からボトルネックの所在を切り分け、自分のコントロール範囲で改善を仕掛け続ける姿勢の重要性を改めて実感した。