AI活用
生成AI・分析AIを実務フローに組み込む
素材不足・スケジュール制約・分析の属人化といった実務上の課題に対し、生成AIと分析AIを具体的なフローとして組み込んだ事例を3ケース紹介する。画像・動画の生成制作から、GA4 × Geminiを使った数値分析のチーム標準化まで、「道具として使い切る」観点で設計・実行した。
OVERVIEW
銭湯でのサンプル配布用チラシに、ターゲット層(30〜40代男性)のイメージキャラクターを挿入する必要があった。スケジュールとコストの制約からモデル撮影は不可能で、クライアントの「ぱっと見で何のサンプルかわかるように」という要件を満たすため、AI生成を提案・採用した。
APPROACH
30〜40代男性のレンタルポジが見つからず、モデル手配と撮影もスケジュール上間に合わなかった。クライアントに状況を共有し、AI生成での制作を提案して承認を得た。
洗顔・シャンプーのシーンは上半身の露出が多く、Adobe Fireflyの生成ポリシー上NGになりやすい。上半身が見えるカットを引き出せるようプロンプトを設計した。また当時の生成AIは同一人物を固定して複数シーンを生成する機能が不安定だったため、まず顔を確定させ、その画像を学習データとして追加したうえで別シーンを生成する2段階のフローを採用した。
PROCESS
- Photoshop上で洗顔する男性を生成・選定
- 確定した顔を学習データに追加し、シャンプーシーンを生成
- Photoshopで色味・質感を合わせてレタッチ
- チラシデータに組み込んで完成
OVERVIEW
ヘアケアブランドepaulerのMeta広告バナーを定期的に制作していたが、クライアント提供の動画素材はバナー転用に適さず、Before/Afterを見せる新規撮影もモデル手配の時間が取れなかった。AI生成ならBefore/Afterを同一人物・同一画角で生成しやすいという強みを活かし、制作に踏み切った。
APPROACH
ターゲットは50代女性。20〜30代のような滑らかすぎる髪質は逆にリアリティを損なうため、「トリートメントなしでここまで回復できる」という説得力のある質感をプロンプトで指定した。過度に完璧な仕上がりを避け、共感を得やすいAfter像を設計した。
NanoBanana2用のプロンプトをゼロから書くのではなく、Geminiで初稿を生成し、Flowで実際に画像を出しながらGeminiにフィードバックして微調整するループを回した。LLMをプロンプト設計の補助に使うことで、ツール単体で使うよりも精度を上げられた。
PROCESS
- GeminiでNanoBanana2用プロンプトの初稿を生成
- Flowで画像生成・確認
- Geminiにフィードバックしプロンプトを微調整、Flowで再生成を繰り返す
- 期待通りの画像が得られたらPhotoshopでレタッチ
- バナーデータとして完成
振り返り
AI生成の進化により、狙い通りの画像を以前より短時間で作れるようになった。実写と比べてレタッチ工数が少ない分、制作時間の短縮に直接つながっている。一方、よく見ればAI生成だと気づける仕上がりになることもあり、今後は不気味の谷を避けるための後処理・加工技術の習得が課題になる。
OVERVIEW
ヘアケアブランドepaulerのMeta動画広告を、シナリオ設計から映像生成・編集まで一貫してAIを活用し制作。UGC形式の街頭インタビュー動画として仕上げ、営業目標CTR 2%に対して4.43%を達成した。他の動画素材から成果を大きく引き離した。
APPROACH
ソーシャルプルーフの観点から、作り込まれた広告よりも実際のユーザーレビューに近いUGC形式の方が購買行動につながりやすい。Meta広告においてもその傾向が強く、今回の訴求形式として採用した。ターゲットである50代女性が自分ごと化しやすいよう、ミドル〜ロングヘアの女性を起用し、テロップを大きく見やすくする設計とした。
複数サービスでPoCを実施した結果、Veo3がもっともプロンプトに忠実で、かつ生成制限がなかったため採用した。他サービスはクレジット消費型で、知識が少ない状態でのトライアンドエラーにコストがかかりすぎるという判断もあった。
Veo3は商業的な言い回し(商品訴求・価格訴求)がNGになりやすいため、シナリオを「本人の感想」として表現するよう設計した。また1カットが8秒までの制限があるため、複数カットにまたがる場合は人物・声のトーンが一致するよう、何度も生成を繰り返して調整した。
PROCESS
① シナリオ設計フェーズ
- 営業からコンセプトと参考動画を受け取る
- LPの内容をClaudeに読み込ませ、訴求ポイントを整理
- 過去のシナリオ・参考動画をNotebookLLMに読み込ませ、シナリオ構造を書き出させる
- 上記をすべてインプットとして、コンセプトに沿ったシナリオをAIで生成
- Claudeでファクトチェック・薬機法チェックを実施
- 過去シナリオを元に必要注釈をAIで生成
- 営業チェック → クライアントチェック
② 映像生成フェーズ
- GeminiでNanoBanana2用プロンプトを生成し、Flowで1フレーム目を生成。Gemini↔Flowを繰り返し理想の人物像に近づける
- 確定した1フレーム目をVeo3に読み込ませ、Geminiで作成した動画プロンプト(8秒分)を入力して生成。Gemini↔Veo3を繰り返して調整
③ 編集・リリースフェーズ
- Premiere Proでテロップ・注釈・音声を編集
- クライアントチェック
- 営業がタイミングを見てMeta広告としてリリース
RESULTS
- CTR:4.43%(営業目標2%の2倍以上、他素材から成果を大きく引き離す)
振り返り
AIを使ったフルフロー制作の中で、人間が担う役割が明確になった。シナリオの薬機法チェックや方向性の判断、複数カット間での人物・声の一貫性確保など、クオリティの担保は最終的に人間の目と判断が必要になる。AIは制作速度を上げる道具であり、その分だけ人間がクリエイティブの精度を高めることに集中できる体制が整った。
OVERVIEW
GA4・Clarityによるデータ分析にGeminiを組み込み、仮説の妥当性検証と改善提案を効率化するフローを設計した。自分だけが使うツールとしてではなく、デザイナーチームの数値解析を標準化する仕組みとして構築した。
APPROACH
画面やフローの設計には、数値だけでは見えない定性的な背景や文脈がある。AIは定量データの読み取りは得意だが、サービス固有の経緯やユーザーの行動の背景までは把握できない。そのため、仮説の立案は必ず人間が行い、AIにはその妥当性の検証と、人間がカバーしきれなかった観点の補完を担わせる役割分担とした。
Geminiへのプロンプトには「ユーザーが立てた仮説に靡かず、データに基づいて判断すること」を明示し、AIが人間の先入観を追認するだけにならないよう設計している。
以前から自分はGA4・Clarityを活用して分析を進めていたが、メンバー全員が同じように扱えるわけではなかった。「気軽にデータを見て仮説を立て、AIに妥当性を確認する」というPDCAを誰でも回せる構造にすることで、デザイナーの数値解析レベルの底上げを図った。
PROCESS
- 目的を明確にする — 何を改善したいかを言語化する(例:CVRの改善、ページ回遊の促進)
- 対象ページと数値を特定する — GA4のレポートから対象ページのデータを取得し、ファネル上の各ページを押さえる
- 流入元を確認する — トラフィック獲得レポートでチャネル・参照元ごとのユーザー行動を確認し、セグメントで比較する
- ページ内行動を見る — イベントレポートでスクロール・クリック・ページビュー数を確認し、異常値から課題の仮説を立てる
- 離脱・次の行動を見る — 探索→経路探索で、対象ページの前後の導線を確認する
- 仮説を立てる — ここまでのデータを元に、自分の言葉で仮説を立てる(例:CTAボタンが目立っていないのでは?)
- ClarityのデータとGeminiで検証する — ClarityでCTAボタンの実クリック数やユーザー行動を確認。定量調査結果をCSVで出力し、仮説・ページの背景・目的とともにGeminiに投げる。妥当性の判断と、人間がカバーしきれなかった観点の補完をしてもらう
- 施策を決定する — AIの検証結果も踏まえて、具体的な改善施策を検討する
振り返り
分析に自信が持てず判断に困っていた状況が、Geminiとの往復によって「仮説が妥当かどうかを確認できる構造」に変わった。このフローをナレッジとしてチームに共有することで、GA4に不慣れなメンバーも数値を起点にした改善提案ができるようになることを目指している。